2010年7月
2008年よりアフガニスタンでプロジェクトのモニタリングとレポーティングを担当している川嵜渉です。Monitoring and Reporting Coordinatorとしての私の主な仕事は、現在国連ハビタットが実施しているすべてのプロジェクトの進捗状況を把握し、それぞれがプロジェクト・プランに沿って適切に実施されているかを各プロジェクト担当者と検討し、プロジェクトを進めていくことです。また各プロジェクトにおけるドナーや国連ハビタット福岡本部へ提出する報告書（中間および最終報告書など）を取りまとめています。これから、たびたびプロジェクトの実施の様子や人々の様子など、レポートしていていきたいと思います。
国連ハビタット・カブール事務所だけでも、およそ100人の現地スタッフが常駐し、10人の国際職員（私を含む２人の日本人職員）がアドバイザーとして働いています。2010年7月から新しく日本人女性の職員、小川佳子（おがわ よしこ）さんが、Livelihoods Development Advisorとして働き始めました。小川さんは2008年からおよそ2年ほど、国連アフガニスタン支援ミッション（UNAMA: United Nations Assistance Mission in Afghanistan）でCoordination Officerとして働いていました。アフガニスタンに勤務する前はカンボジアの国連食糧農業機関（FAO: Food and Agriculture Organization of the United Nations）で、収入向上プロジェクト等を通してコミュニティ住民の生活改善支援プロジェクトを担当していました。今後は、主に現在実施している日本政府支援プロジェクトの農村部における職業訓練及び起業家育成支援を担当し、ジェンダー問題にも従事していく予定です。
アフガニスタンにおける国連ハビタットの活動
西はパキスタン、東はイラン、ほかにもタジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、中国と合計6カ国と国境を接するとても隣接国の多い国、アフガニスタン。長年にわたる紛争により、国内の7割以上のインフラが破壊され、人口のおそよ4割が避難民となりました。また国全体が無政府状態と化して、国土の大半を占める農村部においては県レベルの行政組織もない状況でした。2002年、カルザイ新政権が発足したことにより、農村部を対象に復興プログラムの策定支援を要請された国連ハビタットは「国家連帯プログラム（NSP: National Solidarity Programme）」の開発を支援してきました。国家連帯プログラムは、現在ではアフガニスタンの34県全てで実施される国家の旗艦プログラムとなり、世界銀行や日本政府を含むさまざまなドナーが資金を拠出しています。
国家連帯プログラムによる農村部の基本サービスや生活インフラの改善に加え、国連ハビタットはカブールを含む20県に事務所を設置し、都市部と農村部でさまざまなプロジェクトを展開しています。コミュニティに住む住民自身が自ら開発・改善プロジェクトを計画・実施することにより、地方自治体と共にコミュニティの能力開発を促しています。特に下記のようなプロジェクトをアフガニスタンでは現在実施しています。
- インフォーマル居住区の水供給設備、基本サービスの改善や生活インフラの整備、居住・生活改善を通して、元兵士や帰還民等の再定住の支援
- 基本サービスを提供するために都市部の地方自治体の能力強化
- 識字教育や数学といった従来の基本に加えて、生産能力の向上を目的とした教育や職業訓練（農業、家畜、建設、溶接、カーペット織、縫製など）の実施や、コミュニティによる預金・貸付グループの設立等の活動も行うことによるコミュニティ強化の拡大
- 都市開発省への政策支援の提供
アフガニスタンで活動をしているのは、国連機関ばかりではありません。日本、アメリカ、イギリスなどの二国間の支援国、世界銀行、国際金融基金、国際NGOなど、さまざまな支援機関が活動するまさに支援のデパート状態になっています。引き続き開催された7月20日のアフガニスタン支援国会合では、これまでの開発の成果と今後の課題や開発計画に対する理解を深め、国際社会のさらなる協力を求めるということが話し合われました。今後の課題にしてもまだまだ非常に難しい状況ではありますが、これからも国連ハビタットはこのような国・まちづくり真っ只中のアフガニスタンで、コミュニティの住民と共に復興・開発支援プロジェクトを実施していきます。
