アジア太平洋地域は近年順調な経済成長を遂げており、社会資本整備、居住環境、生活水準等の大幅な改善が見られる一方で、自然環境には大きな負荷がかかっています。また、同地域では急速な人口増加が進み、今後の25年間に10億人以上の人口増が見込まれておりますが、その大部分は都市に集中するものと予測されています。従って、今後ともアジア太平洋地域が安定的な経済成長を続けるためには、経済開発の一方で都市問題、環境問題に取り組み、いわゆる持続可能な都市・地域を形成していくことが極めて重要であると考えています。
国連人間居住計画(ハビタット)は1980年代半ばより環境に配慮した「都市管理プログラム(Urban Management Programme: UMP)」、その後「持続可能な都市プログラム (Sustainable Cities Programme: SCP)」また最近では「気候変動と都市プログラム(Cities and Climate Change Initiative: CCCI)」を実施しており、これまでにアジア太平洋地域でのべ100近い都市において、開発と環境・エネルギーの相互作用、持続可能な開発のための資源管理やそれを実現するためのガバナンスのあり方について調査研究・政策提言等を行っています。また貧困やスラム改善事業、大規模な自然災害や紛争後の復興事業の実施に際しても、環境に配慮した持続可能なコンセプトと手法でまちづくりを推進しています。 一方、環境関連技術については、日本国内には先進的な技術はもとより、公害を克服した都市の取り組みなど自治体やコミュニティレベルでの優れたノウハウ・経験が数多く蓄積されています。国連ハビタットの事業実施国や事業パートナーであるアジアの政府・自治体からは、そのような日本の環境関連技術の導入や支援、また日本の経験やノウハウから学びたいという期待が多く寄せられています。
このようなアジア太平洋地域の多くの都市が求める環境技術・ノウハウや、持続可能な都市の概念を普及・定着させるためには、技術・情報・ノウハウの共有化・ネットワーク化が重要です。K-CAP(アジア都市連携センター:Knowledge Management Center for Asia and the Pacific)は、日本におけるアジアの玄関口である福岡に地域拠点を置く国連ハビタットが、政府・自治体・研究機関、民間企業・マスメディアや市民団体等を結ぶプラットフォームとして機能し、環境技術に関する専門家会議やパイロット事業、ワークショップ・研修の実施などを通してアジアと日本の連携を促進する役割を果たしたいと考えています。