2011年6月
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、世界各国から多くの心配の声と支援が日本に寄せられました。私がコンサルタントとして、年に何度か出張しているモンゴル事務所からも、多くのメイルが寄せられました。その一つは、「少しでも被災者の役に立ててもらうよう、事務所のスタッフで寄付金を集めたいのだが、どこに送るのがいいか。」という相談のメイルでした。
ゴル事務所代表者が義援金を手交。
(2011年5月31日)
国連ハビタット・モンゴル事務所では、現在、日本政府の資金供与を得て、首都ウランバートル市にて、『ゲル地区生活環境改善計画事業』を実施しています。日本の支援で事業を実施しているからこそ、日本のために何かをしたいという気持ちが強かったのでしょう。皆で話し合った末、スタッフ全員が一日分の給料を寄付し、JICA(国際協力機構)モンゴル事務所長に手渡しました。JICAでは、各国から寄せられた義援金を、被災した宮城県、岩手県、福島県や、被災地で活躍するNGOなどに届けています。
本事業は『コミュニティー開発無償』という種類の政府開発援助(ODA)で、その案件監理はJICAの管轄です。事業開始当初より、JICAモンゴル事務所および本部の担当者の方々と相談しつつ、事業を進めてきました。これまで、道路脇の歩道、バス停、給水所などの小規模インフラが、住民の手により作られてきました。現在は、幼稚園、共同シャワー室、商業施設など、工事会社による中規模な建物の建設が正念場を迎えています。いずれの建設事業にも共通することですが、場所の選定や建築許可には政府との連携が不可欠ですし、設計・工事会社の管理も一筋縄ではいきません。こうして、日々直面する課題について、国連ハビタットは、JICAより様々な支援やアドバイスを受けています。
務所で本事業を担当くださっている富原崇之氏。
ゲル地区には、水や電灯といった基礎的なインフラが不足しています。また、ちょっとした買物にも、人々は不便な交通手段を使って首都中心部に出てくるしかありません。幼稚園も不足しているため、幼い子どもたちは小学校入学前の教育を受けることができません。本事業を通じて建設される小規模・中規模のインフラは、ゲル地区に住む人々の生活を変えることでしょう。そして、本事業を成功させ、よりよい効果を生むことこそ、日本の皆さんの支援に報いることになるでしょう。