背景
都市部貧困層は近年の都市開発の恩恵を充分に享受できておらず、更には開発により住んでいた土地からの強制撤去を強いられることもあり、農村部から移住してきた貧困層は「貧困の都市化現象」をも招いている。劣悪な居住環境は現在も緊急レベルで、人間の安全保障のアプローチを通した継続的な支援が必要とされる。本プロジェクトは、「プノンペン貧困緩和プロジェクト」に補間する形で、日本政府からの拠出金による「国連人間の安全保障基金」の援助を受け、プノンペン地区のスラム等貧困地区の住環境を改善することで貧困削減に寄与している。
フェーズⅠでは、プノンペン市4地区にて、貧困層地域の発病率や医療関連支出の主な原因である安全な水と衛生設備の不足を解消すべく、地域活動計画に基づき水や衛生分野の改善に重点をおかれた。フェーズIIでは、「コミュニティの為の人間の安全保障基金」をプロジェクトに設置することで貧困層の財源・資金へのアクセスを可能とし同時に、貧困緩和と人間の安全保障の重要性をアピールする。また、フェーズIの成果や実績をもとに、コミュニティ請負制度・地域活動計画の手法を引き続き採用して雇用の創出、職業技能の修得、地域経済の活性化を行う。
成果
フェーズⅠでは、都市貧困層および不法居住者2,095世帯および学生・生徒3,500人に恩恵をもたらした。上水道や衛生設備の整備、および予防保健に関する意識が高まったことで、病気の発生率が著しく低下し、各世帯の医療関連支出を削減することで貧困が緩和された。また、地域の主体性や団結心を高めるために、コミュニティ請負制度が採用され、地域全体の組織力強化につながった。2004年5月29日には、プノンペン市において在カンボジア日本国大使などの出席のもと、フェーズⅡのためのプロジェクト事務所の開所式が行われた。専門職員が着任し、プロジェクト実施の手法等のワークショップが開催された。
「人間の安全保障基金」とは
1999年、日本政府の拠出金(2002年度までに総額約229億円)により国連に設置された信託基金。国家レベルの安全保障ではなく、一人ひとりの生命や財産の保護を重要視する人間中心の安全保障という理念に基づき、約百件の支援事業に拠出している。詳細は、下記のリンク先をご参照ください。